「安全な製品」を設計するためには、まず「安全な製品」とは何かを理解する必要があります。
安全とリスクの定義
<ISO/IECガイド51(2014)> 安全 : 許容できないリスクがないこと |
<ISO/IECガイド51(2014)> リスク : 発生頻度と危害の程度の掛け合わせのこと |
絶対的な安全(リスクがない状態)は実現することができないという考え方に基づき、安全はリスクという概念を通して定義されています。企業は製品を安全なものにするために、「リスクを許容できるレベル」まで低減する必要があります。
欠陥の定義
<製造物責任法 第二条> 欠陥 : 「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。」 |
<製造物責任法 第三条> 「欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」 |
つまり「安全な製品」とは、
・リスクが許容できるレベルの製品
・欠陥のない製品
ということになります。
一般的には「安全な製品」を提供する限り、仮に製品の使用に伴い事故が発生したとしても法的責任を問われることはありません。しかし、製品を設計する企業にとってやっかいなのは、製品が持つリスクがどの程度であれば「安全な製品」なのかの明確な答えがどこにもないことです。さらにやっかいなことに、その答えは社会情勢や時代によって変化します。現在と10年後の「安全な製品」はかなりの確率で異なっているのです。企業は「安全な製品」を自ら想定し、市場に問うことでしかその答えを得ることができません。
コストや性能を無視すればリスクを極限まで小さくすることは可能かもしれませんが、それでは売りが立たず、企業の経営は成り立ちません。安全性とコスト、性能を両立させる力が企業の重要な技術力・競争力のひとつであると言えます。
製品設計プロセスの中では、下記のような情報を参考にしながら、「安全な製品」へと作り込む作業を行います。
社会情勢の変化 | 社会情勢の変化を敏感に感じ取り、設計に取り入れる。 <例> 高齢者の増加 ⇒ 高齢者でも怪我しない配慮(高齢者が使用する頻度が上がる)など 外国人観光客の増加 ⇒ 文字に頼らない警告ラベルなど |
法規制関連 | 法規制は最低限のルールに過ぎない。法規制をベースにどの程度まで配慮するか判断する。 |
業界基準 | 業界基準は最低限の基準に過ぎない。業界基準をベースにどの程度まで配慮するか判断する。 |
自社基準 | 社会情勢の変化などに合わせて、自社基準も見直す必要あり。 |
市場における製品事故や判例の状況 | 自社製品に必要な安全レベルを示唆する重要な情報となる。 |
競合他社の製品仕様 | 自社だけが著しくリスクが高い状態は社会的に許容されない。 |
自社類似品の不具合情報 | 発生頻度、危害の程度、製品の使われ方を推定するための重要な情報となる。 |
自社の技術力・管理能力 | 自社のシミュレーション能力や品質管理能力などを前提に、安全率などを決定する。 |
製品モニターテスト | 発生頻度、危害の程度、製品の使われ方を推定するための参考情報となる。 |
その他市場情報 | お客様アンケート、営業情報、メンテナンス情報、web情報など。 発生頻度、危害の程度、製品の使われ方を推定するための参考情報となる。 |