安全・性能を確保すべき範囲の決定

使われ方の抽出・明確が完了したら、次はその使われ方に対して安全・性能を確保すべき範囲を決定します。製品の安全性、性能、コストに大きく影響する意思決定であるため、設計担当者一人で決めるのではなく、組織として承認・決定する仕組みを構築しておく必要があります。

 

安全・性能を確保すべき範囲を決定する際のポイントは以下の通りです。

<安全性>
・「意図される使用」「予見可能な誤使用」の安全性は必ず確保する(製造物責任法で求められている)
・「異常使用」「無謀使用」に対してどのような対応をするかを明確にする。
・安全を確保する範囲は必ず経営者が承認する。

<安全性以外>
・「意図される使用」については性能を確保する。
・「予見可能な誤使用」「異常使用」「無謀使用」に対してどのような対応をするか明確にする。

 

前項の幼児用椅子の「使用」の部分を抽出して考えてみます。

  使われ方 安全性 安全性以外の性能
意図される使用 3歳の幼児が使用  確保する  確保する
予見可能な誤使用 6歳の児童が使用  確保する  外観上の不具合が出てもよいが、椅子としての機能は保持する。
異常使用 12歳の児童が使用  確保しない(警告ラベルで注意喚起)壊れ方には配慮する(鋭利な破断面とならないなど)  確保しない
無謀使用 成人が二人同時に使用  確保しない(注意ラベルも使用しない)  確保しない

上記よりこの使われ方においては「意図される使用」「予見可能な誤使用」「異常使用」の内容が、詳細な仕様検討をするために必要であること決定したことになります。この2つの項目をブレークダウンしていくと、この項目に対する製品の要求事項が決定します。

  使われ方
意図される使用 3歳の幼児が、屋内で、腰を掛ける、3年間、1回/日
(室温は最大35℃、体重は3歳男児の95パーセンタイル値とする)
<製品の要求事項>
・上記の使われ方において安全性も安全性以外の性能も確保する。
予見可能な誤使用 6歳の児童が、屋内で、腰を掛ける、3年間、1回/日
(室温は最大35℃、体重は6歳男児の95パーセンタイル値とする)
<製品の要求事項>
・上記の使われ方において安全性は確保する。外観上の不具合が出てもよいが、椅子としての機能は保持する。
異常使用 12歳の児童が、屋内で、腰を掛ける、3年間、1回/日
(室温は最大35℃、体重は12歳男児の95パーセンタイル値とする)
<製品の要求事項>
・上記の使われ方において安全性も安全性以外の性能も確保しない。ただし、警告ラベルを使用することと、破壊時に破断面が鋭利にならないように配慮する。

 

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