仕組みを作る上で押さえておきたいポイント

製品設計の仕組みを構築する上で押さえておきたいいくつかのポイントがあります。

①必要最低限のシンプルな仕組みにする
仕組みの構築は管理者側の視点が優先されることが多く、必要以上に複雑なものになりがちです。必要以上に複雑な仕組みは設計者のモチベーションや設計の生産性を低下させてしまいます。また、複雑な仕組みは仕組み自体を改善するハードルも高くなり、問題があっても放置されることになります。一方で設計者寄りになり過ぎると、本来必要なルールや手順まで不要と判断してしまう可能性があります。設計者は基本的には楽をしたいものなので、できるだけルールを減らす方向にモチベーションが働きます。管理者と設計者の両方の視点を入れ、利益を生み出す製品に育てるという目的を達成できる、必要最低限のシンプルな仕組みにすることが重要です。

②自社の実情に合わせた仕組みにする
会社により製品の種類、設計者の人数・レベル、設計資産の質・量などそれぞれ異なります。本で探してきた大企業の仕組みをそのまま導入したり、設計システムソフトを販売している会社の言うがままに仕組みを導入したりしても、うまくいくことはありません。自社の実情に合わせた仕組みを自らの手で構築、改善していくことが重要です。

③経営者の思いを共有する
製品設計はトレードオフの連続です。「この部分にネジを付ければ強度は確保できるけど、デザイン性が落ちるなぁ」といったトレードオフが日々発生します。設計者はできるだけ両立するように考えるはずですが、どうしても両立せず、どちらかに優先順位をつけなければならないケースが出てきます。その場合に判断基準のひとつとなるものが経営者の思いです。設計者は納期を守ることがミッションのひとつなので、経営者が承認しないような設計をすることは通常ありません。製品に美しさを求めた米アップル社のスティーブ・ジョブズ氏に、デザイン性を落としてコストを下げた設計で決裁を取り付けようとする設計者はいなかったと思います。設計の手戻り防止による設計リードタイムの短縮、経営者の思いの実現のためにも経営者の思いを設計者としっかり共有することが重要です。当然、仕組み自体も経営者の思いを体現したものにしなければなりません。例えばデザイン性を最重視したいのであれば、デザインに関して確認する場を設計工程のできるだけ早い段階に設けるなどの仕組みにすればよいのです。

④製品戦略を立てる
製品設計に関連する業務量は非常に大きなものです。少人数のスタッフで幅広い市場をターゲットとすることは多くの場合難しいと思われます。無理にやってしまうと、製品の改善が追い付かなかったり、競合他社に市場を奪われたりする可能性が高くなります。組織の規模でカバーできる市場にターゲットを絞ることが重要です。もちろん、市場の拡大が見込め、組織を大きくする余力があるのであれば、ターゲットを広げることに問題はないと思います。また、売れない製品を作ることほど経営資源を無駄にすることはありません。大企業とバッティングしない市場を見極め、自社の強みが生かせる市場・製品で戦う戦略を立てる必要があります。その戦略に沿って製品設計の仕組みを構築していけばよいと思います。

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