製品の使われ方の明確化

インプットをすべて入手したら、次に製品の製造から使用、廃棄に至るまでのライフサイクルの中で、製品がどのように使われるのかを明確にします。そして、どのような使われ方まで安全性や性能、品質などを確保するのかを決めることによって、製品の詳細な仕様を決めて行くことができます。これらの作業なしで詳細な仕様を決めることはできません。例えば、樹脂製の幼児用椅子の設計をする場合、成人が使う可能性を否定するのか肯定するのかによって、必要な強度は数倍異なります。安全性、コスト、性能などに大きく影響を与える設計の非常に重要な工程の一つなのです。

製品の使われ方を抽出するのは、やってみると意外と難しいことが分かると思います。思いつくままにやっているだけでは、使われ方に抜けが発生したり、情報が多くなり過ぎてコントロールできなくなったりします。そこで以下を考えながら使われ方を抽出することをおすすめします。

①5W1Hを意識して抽出する(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)
②ライフサイクル全体を想定して抽出する(製造⇒輸送⇒販売⇒使用⇒保守⇒廃棄)
③製品への影響が大きなノイズを意識しながら抽出する(温度、水分、荷重など)
④同様のノイズにおいては製品に与える影響が最もシビアな使われ方を抽出する
(例:環境温度が影響を与えるのであれば、最も温度が高い使われ方を抽出)
⑤仕様決めに必要のない使われ方は抽出しない
⑥使われ方は下記図の4分類とし、安全性とそれ以外でそれぞれ性能確保の範囲を決定する。
(意図される使用、予見可能な誤使用、異常使用、無謀使用)

 

misuse

 

 

樹脂製の幼児用椅子を設計する場合を例に考えてみます。

ライフ
サイクル
意図される使用 予見可能な誤使用 異常使用 無謀使用
製造  倉庫内で保管  直射日光の当たらない屋外で保管 直射日光の当たる屋外で保管  雨ざらしで保管
輸送・据付  丁寧な荷卸し  荷卸しの際誤って落とす  荷卸しの際に投げる  荷卸しの際に蹴る
販売  5段段積みして販売  8段段積みして販売  12段段積みして販売  15段段積みして販売
使用  3歳までの幼児が使用  6歳の児童が使用 12歳の児童が使用  成人が二人同時に使用
保守  壊れたら買い替え   壊れたら業者に依頼し修理する  
廃棄 適切な処理方法で廃棄   自宅で燃やして処分する  

このような感じで製品の仕様に影響する使われ方をすべて抽出していきます。幼児用の椅子でも全部書き出すと膨大な量になります。しかし実際には完全なる新規の製品というのはほとんどないと思いますので、設計変更点に関係する使われ方のみを抽出すれば、実務上はそれほど大変な作業にはなりません。

次へ 「安全・性能を確保すべき範囲の決定」

「利益を生み出す製品設計の仕組み作り」  トップに戻る

更新日:

Copyright© 田口技術士事務所 , 2020 All Rights Reserved.