普段は特に気にすることもないパンの留め具。
実は中小製造業にとって非常に参考になるビジネスモデルを持った製品です。
この製品はクイック・ロック・ジャパンのクロージャーという製品です。
クロージャーを全世界で展開しているアメリカのクイック・ロック社の日本法人が販売しています。
この形態のパン留め具においては日本国内において90%以上のシェア。大手の製パンメーカーではほぼ100%使用しているとのこと。
出荷量は年間30億個ほど。1個0.5円で考えても年間15億円ほどのニッチな市場です。
この会社のビジネスモデルのすばらしいところは、クロージャーという流れ品(量産品で継続的に出荷されるもの)と機械の両方を売っているところです。機械は下の写真のように単品で売るケースもあれば、工場のラインに組み込む形で売るケースもあります。
クロージャーは巻物の形でそれぞれの製パンメーカーへ納入されます。
このような比較的単純な機構の機械は壊れにくいため、機械だけを販売していても売り上げが確保しにくいものですが、流れ品を販売することにより継続的に売り上げを確保することができます。
クロージャーを使用するメーカー側もコストダウンのために他の企業にクロージャーを作ってもらうという方法もありますが、機械が故障したときに保障の範囲外と言われてしまうので、そういうコストダウンは躊躇するでしょう。工場のラインに組み込まれているので、別の製品に切り替えるのもハードルが高くなると思われます。また、ニッチな市場であるため、他社や大手企業が参入してくる可能性も低い。中小企業にとって非常に参考になるビジネスモデルではないでしょうか。
この製品のビジネスモデルのポイントは3つです。
①ニッチ市場である。
②機械と流れ品の両方を納品している。
③製造ラインに組み込まれているため、ユーザーの仕様変更のハードルが高い。
※情報・写真 2015年5月西日本食品産業創造展